自動車損害賠償責任保険

お金・税金・保険

(この記事は、2022年5月10日に作成、サイト整理により2023年8月26日に転載しました。)

廃車をすると還付の手続きが可能になる「自賠責保険」。自動車の購入や車検をすると「いつの間にか加入していた」みたいな保険ですが、とても大切な保険ですので解説したいと思います。

「自賠責保険」とは

正式には「自動車損害賠償責任保険」といいます。交通事故による被害者を救済するため、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることで、基本的な対人賠償を確保することを目的としている。自動車の運行で他人を死傷させた場合の人身事故による損害について支払われる保険で、物損事故は対象になりません。すべての自動車は、自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険に入っていなければ運転することはできません。この自賠責保険に入っていない自動車を運行することは、自動車損害賠償保障法5条で禁止されており、これに違反した場合1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることになっています。

自賠責保険から支払われる保険金

支払いできる内容と限度額(被害者1名につき)
死亡最高3000万円
後遺障害障害の程度により75~4000万円
傷害最高120万円

詳しい内容は「自賠責保険(共済)損害調査のしくみ(PDF )」及び「自賠責保険支払基準(PDF)」(損害保険料率算出機構発行)をご覧ください。

自賠責保険の契約

加入窓口

自賠責保険は、損害保険会社の支店等をはじめ、自動車販売店や整備工場などの代理店で取り扱っています。通常、車検を受けたときに次回の車検までの期間を加入しています。 また、原動機付自転車・250cc以下のバイク(軽二輪)については、郵便局(一部取扱いのない局もあります)からでも手続が出来るほか、一部の保険会社(組合)では、インターネットやコンビニでも手続きが出来ます。

保険料

自賠責保険の保険料は、政令で定められているのでどの保険会社で加入しても同一の料金になります。保険料率は損害保険料率機構が全国の自賠責損害調査事務所が収集したデータをはじめ各種のデータを分析して「能率的な経営の下における適正な原価を償う範囲内でできる限り低いものでならなければならない」という法令の規定に従って利潤や損失が生じないように算出しています。

また、用途(自家用・事業用)・車種(乗用・貨物、普通・小型・軽など)及び地域(本土・沖縄・離島など)によるリスクの差異に応じた区分を設けており保険料率が異なります。

保険料率は、純保険料率と付加保険料率の2段階で構成されます。

  • 純保険料率
    事故が発生したときに、保険会社が支払う保険金に充てられる部分
  • 付加保険料率
    保険会社が保険事業を行うために必要な経費などに充てられる部分

保険金の支払い

保険金支払いまでの流れ

交通事故による損害が発生したら、保険金の請求を行います。通常、任意保険に加入している場合は任意保険の保険会社に、任意保険に未加入の場合は自賠責保険の保険会社に連絡します。請求から支払いまで基本的に損害保険会社(組合)によって行われますが、保険金(共済金)の請求から支払までの流れは次のようになります。

  1. 請求書提出
    請求者は、損害保険会社(組合)へ自賠責保険(共済)の請求書類を提出します。
  2. 損害調査依頼
    損害保険会社(組合)では、請求者から提出された自賠責保険(共済)の請求書類を確認して、損害保険料率算出機構(以下「損保料率機構」といいます。)の調査事務所に送付します。
  3. 損害調査
    調査事務所においては、事故の発生状況、支払いの適確性(自賠責保険(共済)の対象となる事故かどうか、また、傷害と事故の因果関係など)及び発生した損害額などを公正かつ中立の立場で調査をします。
  4. 損害報告
    損保料率機構調査事務所は、損害保険会社(組合)に調査結果を報告します。
  5. 保険金(共済金)支払
    損害保険会社(組合)は、支払額を決定し請求者に自賠責保険金(共済金)を支払います。
  6. 保険金(共済金)受取
    以上のような流れで、保険金(共済金)を受け取ることができます。

自賠責保険金請求の種類

自賠責保険の保険金の請求については、被害者が直接損害保険会社とのやりとりをすることもあります。

  • 加害者請求
    加害者がまず被害者に損害賠償金を支払い、そのあとで保険金を損害保険会社に請求します。
  • 被害者請求
    加害者側から賠償が受けられない場合、加害者が加入している損害保険会社に損害賠償額を直接請求することもできます。
  • 一括払制度
    多くの場合には、加害者が自賠責保険のほかに自動車(任意)保険にも加入しており、交通事故の際に、被害者の方が加害者に対して請求したり、自賠責保険の被害者請求をしたりすることなく保険金を受け取ることができるよう、任意保険の損害保険会社は被保険者に対して支払責任を負う限度において、加害者に代わって自賠責保険の保険金を含めてお支払いすることがあります。これを任意保険会社が一括して賠償金を支払うことから、一括払制度と言われています。

自賠責保険金請求の期限

自賠責保険では3年で時効となり、保険金の請求する権利が消滅します。何らかの理由で請求が遅れてしまう場合は、時効更新の制度があるので、各損害保険会社に相談してください。

  • 加害者請求
    (傷害・後遺障害・死亡)損害賠償金を支払ってから3年以内
  • 被害者請求
    (傷害)事故が発生してから3年以内
    (後遺障害)症状が発生してから3年以内
    (死亡)死亡してから3年以内

自賠責保険の名義変更・解約

自賠責保険の名義変更

中古車を購入した場合などに旧所有者の自賠責保険証書が付いてくる場合があります。契約という観点から見ると名義変更するのが好ましいのですが、実際は契約期間満了までそのまま使用しても問題ありません。
自賠責保険によって補償されるのは、自動車の運転によって「他人の生命又は身体を害した」場合のみです、補償されるのは対人賠償のみであり、保険契約者名とは関係なく被害者への補償がおこなわれます。

名義変更の方法については、契約している保険会社のウェブサイト等で確認してください。

自賠責保険の解約

自賠責保険は、自動車を廃車(ナンバープレート返納)したら解約ができます。契約期間が1か月以上残っていると月割りで解約返戻金を受け取ることができます。
抹消手続き前など自動車が使用できる状態での解約はできません。(重複契約の場合は期間が少ない方を解約することは可能です)

解約に必要な書類

*下記は一般的な例です、必ず契約している保険会社のウェブサイト等で確認してください

  • 自動車損害賠償責任保険証明書(原本)
  • 自動車の廃車等が確認できる書類(登録識別情報等通知書・自動車検査証返納証明書など)
  • 保険契約者本人であることの確認書類(運転免許証・健康保険証など)
  • 自動車損害賠償責任保険承認請求書(一部の保険会社は、ウェブサイトからダウンロードも可能です)
  • 振込先となる銀行口座番号
  • 認印

解約保険料

解約保険料の金額は、どこの保険会社も公表していないようです。(見つけた方がいらっしゃいましたら教えて下さい。)保険会社に直接お問い合わせいただくか、「還付金の案内」をご覧下さい。

(2023年8月26日公開、作成:三浦敏和)

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