「4WD(AWD)なら雪道でも安心」――たしかに発進や登り坂では心強い味方です。
でも、その安心感が“油断”につながることもあります。
結論から言うと、4WDは万能ではありません。特に「止まる」「曲がる」を保証してくれる装備ではないんです。
4WDが得意なのは「進む」ほう
JAFのユーザーテストでも、急な上り坂では4WDが安定して上りきれた一方、2WDは途中でスリップして上れないケースが出ています。
つまり4WDは“進めてしまう”=行ける気がしてしまう。ここが雪道の落とし穴です。
「止まる」は4WDでも伸びる。下り坂は要注意
同じくJAFのテストでは、圧雪の平坦路での急ブレーキ(40km/h、ABS作動)は2WDも4WDも制動距離に大差がありませんでした。
さらに怖いのが下り坂。勾配9%の下りでは、2WDが約29~33mで止まれたのに対し、4WD側は約35~40mと長くなる結果も出ています。
「4WDだから止まれる」ではない――ここは冬道で必ず押さえたいポイントです。
“4WDの過信”が事故につながる可能性を示す研究も
スウェーデンの警察事故データ(STRADA)を使い、同じ車種のAWDと2WD(どちらもESC付き)を比較した研究では、凍結・積雪路でAWDの負傷事故が増える傾向、衝突の重さ(速度)も高い傾向が報告されています。
理由としては、AWDの走り出しの良さが「路面の危険度」を感じにくくし、速度が上がる(=過信)という解釈が示唆されています。
ありがちな誤解3つ(ぜんぶ危険)
①「4WDだからブレーキも効く」
→ 効きません。止まる力は、基本的にタイヤと路面の摩擦とブレーキ制御の話。4WDは“駆動”の仕組みです。
②「4WDだから夏タイヤでもいける」
→ 最悪です。危険なだけでなく、積雪・凍結路での滑り止め措置は法令(都道府県規則)で求められ、違反対象にもなります。
③「スタッドレスならチェーンはいらない」
→ 大雪時は別。国交省の冬道情報でも、スタッドレスでも立ち往生は起こり得ること、またチェーン規制ではスタッドレスでもチェーン未装着は通行できないことが示されています。
今日からできる「過信しない4WD」雪道ルール
- 速度を欲張らない(特に下り・カーブ手前)
- 車間距離は“乾燥路の倍”くらいの気持ちで
- 下りは早めに減速して、急ブレーキを避ける
- タイヤが命:スタッドレスの溝・年数・空気圧を点検
- チェーン携行:降雪予報の日は「持ってる」だけでも安心が段違い
- 「行けた」より「帰れる」判断:引き返すのも勝ち
参考資料
夏用タイヤのまま雪道を走行すると法令違反で反則金6,000円!?(JAF)
「氷雪路で、乗用車のAWD(4WD)は安全上の利点があるのか?― ESC(横滑り防止装置)搭載のAWD車が関与する実事故データの分析」(STRADA)
まとめ
4WDは冬の強い味方。でも「走れる」安心が「止まれる」「曲がれる」安心とは限りません。
冬道は“過信しない運転”がいちばんの安全装備です。
(2025年12月15日公開、作成:三浦敏和)


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