自動運転の目、センサーの技術

自動運転の目、センサーの技術 自動車全般

自動運転は近年注目されている技術の一つです。自動運転の車は、人間の運転手に代わって、道路や交通状況を認識し、安全かつ効率的に目的地に到達することを目指しています。しかし、自動運転の車が人間と同じように道路を見ることができるのでしょうか?その答えは、センサーの技術にあります。

自動運転向けセンサーの代表格と言えば、「カメラ」「ミリ波レーダー」「3D LiDAR」「超音波センサー」の4つ。それぞれに機能や役割が異なり、長所と短所もある。それぞれの短所を補うために複数を組み合わせて使用されているのが一般的になっています。

今回はこの4つのセンサーについて、機能と長所・短所について解説します。

カメラ

撮影した映像を画像処理することで対象物を識別することができる。ほかの車や歩行者のほか、信号機の色や道路標識を識別することにも使われる。

自動運転向けのカメラは主に「単眼カメラ」と「ステレオカメラ」の2種類だ。

単眼カメラはその他センサと組み合わされることが多く、単眼カメラで対象物を検知して、ミリ波レーダーなど他のセンサーで距離などを計測する。(システムが複雑で高コスト)

ステレオカメラ方式は対象物の検知から距離の計測まで全てカメラのみ実現する。(比較的低コスト)

ステレオカメラでは検出したい物体ではなくまず路面を探し、走行可能領域を3次元的に認識する。次に、走行可能空間内にあるすべての点群を障害物候補と認識し、どこからどこまでが1つの物体の塊なのかを判定してグループ化を行う。続いて、物体の種類(クルマ、人、壁など)を特定した後、撮像フレーム間の動作量から各物体の速度を計算する。

長所・・・歩行者など電波の反射率が低い物でも検知できる、信号機の色や道路標識を識別することができる。

短所・・・画像を解析するので、天候や周辺の明るさの影響を受けやすい(濃霧、豪雨、西日など)、画像内で動きが少ないものは誤認識する場合がある(連続した無地の壁やフェンスなど)

ミリ波レーダー

ミリ波は、波長が1mm から10mm で、周波数が30GHz から300GHzの電磁波で、光に近い性質を持ち、直進性が非常に強い。

距離を検出する仕組みは、ミリ波の信号をシンセサイザーという装置で生成し、電波をTXアンテナから送信します。その後、対象物に反射して戻ってきたミリ波を、RXアンテナで受信。送受信で得られた情報をIF信号へ変換してDSPで計算処理を行うことで、対象物との距離を算出するという仕組み。

長所・・・その波長の短さから高性能検知が可能で、他のセンサと比較して天候や光の影響を受けない。

遠距離の検知が得意で、赤外線レーザーセンサーは約20m、超音波センサーは約1m先の対象物しか捉えられませんが、ミリ波レーダーは150m以上の距離の対象物を検知できる。

回路設計などを小型化しやすい構造のため、汎用性にも優れている。

短所・・・段ボールなどの反射率の低い対象物を検知しづらい。

遠距離の検知が得意な一方で、近距離の対象物を検知しづらい。また、小さな物体の検知も、あまり得意ではない。

3D LiDAR

LIDARとはLight Detection and Rangingの略で、レーザー光(赤外線)を照射することで対象物を識別することができる。

2D LiDARは、距離測定光をモータで回転させることにより、光を水平に走査させることで 平面の距離情報の取得を実現しています。

また、3D LiDARでは、高さ方向の情報も得るため、光源を縦に複数個設置させることや、ミラーなどで縦方向のスキャンを追加、また各種の光を曲げる技術を利用して高さ方向の距離情報の取得を実現している、3D情報を高精度に検出しますので、複数物体の複雑な動きの検知・認識、その追跡を実現します。

長所・・・赤外線はミリ波レーダーよりも波長が短いため、一般的にミリ波レーダーよりも小さな物体を検知できる。

自動運転向けに対応した「3D LiDAR」を使うことで、周辺環境の3次元イメージを取得できることが強み。

短所・・・悪天候時に検知能力が低下する、ミリ波レーダーと比較して高価。

超音波センサー

センサヘッドから超音波を発信し、対象物から反射してくる超音波を再度センサヘッドで受信します。超音波式センサは、発信から受信までの「時間」を計測することで対象物までの距離を測定する。

超音波式センサーは、1つの超音波素子が発信と受信の両方を行ないます。反射型の超音波式センサーでは、1つの振動子が発信と受信を交互に行なうので、センサーの小型化が可能。

長所・・・光沢物や透明の固体や液体などの検出が可能で、ほこりや油などの汚れにも強いといった特徴があります。また、音波の広がる特性を活かした、広範囲での検出が可能。

すでに駐車時の障害物検知などで実用化されているため、安価で手に入れられる。

短所・・・超音波は、電磁波よりも伝搬速度が遅いので遠距離の検知には不向き(10メートル程度までの近距離の検知に用いられる)。

強い風や温度差による屈折などの、空気的な変化の影響を受けやすいです。

柔らかい布やスポンジなどの吸音性が高い物体の検出は難しい。

(2023年7月9日公開、作成:三浦敏和)

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