法人社用車の売却・廃車の手順を解説

法人社用車の売却・廃車の手順を解説 未分類

法人が社用車を「売却・廃棄(廃車)・社外/社内譲渡」する際の社内フローを、稟議→会計→法的手続→証跡管理まで一枚で把握できます。

※本記事は一般的な実務解説です。税務・会計は顧問税理士の最終判断、登録・抹消は各運輸支局/軽自動車検査協会の指示を優先してください。

0. まず選ぶ:処分方法の比較

方法 概要 社内の主な手続 会計・税務の論点 受け取る/残す証跡
売却(外部買取) 業者へ売却し現金化 稟議→見積比較→売買契約→引渡 帳簿価額との差が固定資産売却益/損。消費税は資産の譲渡で課税対象(簡易課税判定に注意)。 見積・契約書・請求/領収・入金記録・抹消/名義変更の完了書類
廃棄(廃車) 解体・資源化。買取金が出る場合も 稟議→引取依頼→抹消登録/返納→証明受領 除却損または売却扱い(買取金がある場合)。自動車税還付(普通車)。 引取証明・解体/抹消完了の写し・還付関連書類
社外譲渡(無償/低額) 関連先・社員等へ譲渡 稟議(利益相反に注意)→譲渡契約→移転登録 低額譲渡は寄附/交際費/認定課税の論点。印紙/消費税の扱い確認。 譲渡契約書・譲渡証・印鑑関係・移転登録完了の証跡
下取り 新車/中古車購入とセット 稟議→見積比較→売買契約(値引内訳明確化) 取得価額の按分、消費税の計算を見積内訳で明確化 売買契約・見積内訳・入出金記録・名義変更/抹消の完了書類

1. 稟議・意思決定(社内)

稟議に最低限入れる項目

  • 資産情報:車名/型式/登録番号/車台番号、取得年月日、帳簿価額・減価償却累計
  • 処分理由:老朽化/事故/稼働率低下/維持費/CSR・環境方針 等
  • 処分方法:売却・廃棄・譲渡・下取り(複数見積の比較
  • 見積金額・諸費用:引取費、書類代行、キャンセル規定
  • スケジュール:引取日、抹消予定日、会計処理日
  • リスク対策:個人情報/車載データ消去、事故・違反の名義、証跡保管方針

2. 会計・税務の整理(顧問税理士と確認)

  • 売却益/損・除却損:帳簿価額と売却対価の差。廃棄のみで対価なしは除却損
  • 消費税:売却は課税、廃棄は原則不課税(対価が出るときは売却扱い)。
  • 自動車税(普通車):抹消日基準で還付月数が決定。社内入金口座を明確化。
  • 電子帳簿保存法:契約書・領収書・完了書類・メールを電子保存(タイムスタンプ/検索要件)。

3. 法的手続のフロー(普通車/軽)

普通車

  1. 書類準備:委任状(実印)印鑑証明譲渡証、車検証、リサイクル券
  2. 引取・証跡:引取証明(預り証)、車両/ナンバー/メータ/書類の写真
  3. 抹消登録(一時/永久)または移転登録
    (旭商会ではすべて移転抹消します)
  4. 完了書類の受領:登録事項等証明書(抹消記録)など

※所有権留保(販売会社・信販会社名義)の場合は、所有権解除書類を最優先で取得。
※事業用登録の車両は、事業用自動車等連絡書。

軽自動車

  1. 書類準備:申請依頼書(認印可)、車検証、リサイクル券、(譲渡なら譲渡証
  2. 引取・証跡:引取証明、写真4点
  3. 返納(解体返納/一時使用中止)または移転
    (旭商会ではすべて移転抹消します)
  4. 完了書類の受領:解体・返納の完了通知など

※所有権留保(販売会社・信販会社名義)の場合は、承諾書/所有権解除書類を最優先で取得。
※事業用登録の車両は、事業用自動車等連絡書・貨物軽自動車運送事業経営変更等届出書。

4. 情報セキュリティ

  • ナビ/オーディオ:履歴・目的地・電話帳の初期化
  • ETC:カード抜取り+車載器情報の取扱(管理番号メモ)
  • ドラレコ:SDカード回収・上書き設定オフ
  • スマホ連携:Bluetooth/CarPlay/Android Autoのペア解除
  • 車内書類:保険・整備記録・名刺・請求書の回収

5. これだけあれば安心:保存すべき証跡セット

  • 見積・比較表(最低2社)
  • 契約書/注文書・キャンセル規定の明記
  • 引取証明(預り証)+引渡し当日の写真4点
  • 抹消/移転/返納の完了書類のPDF
  • 入出金の記録(売却代金・還付金)
  • 社内稟議書/決裁ログ(電子)

6. 当日の段取りチェックリスト

  • 立会者・時間・駐車位置を共有(警備/受付に連絡)
  • 必要書類・鍵・スペアキー・車検証・リサイクル券・印鑑の準備
  • 引取証明の受領&記載事項(車台番号/ナンバー/日時/担当者/会社情報)確認
  • メータ写真・ナンバー・車体・書類の撮影
  • 機器データの初期化・書類回収を最終確認

7. よくある詰まりと回避策

  • 所有権留保でストップ:残債照会→所有権解除書類一式。ここを先に動かす
  • 住所・社名不一致:履歴事項全部証明書で同一性を証明。
  • 後出し費用:無料条件・追加条件・上限・キャンセル規定を契約書/注文書へ明記。
  • 完了連絡が来ない:契約時に抹消完了期限完了書類PDFの提出を合意。

8. 稟議テンプレ(コピーして編集)

件名:社用車(○○-○○)処分の稟議
1. 資産情報:車名/型式/登録番号/車台番号/取得日/帳簿価額/減価償却累計
2. 処分方法:売却/廃棄(廃車)/社外譲渡/下取り
3. 取引先候補と見積:A社 ¥◯◯、B社 ¥◯◯(諸費用・キャンセル規定明記)
4. スケジュール:引取日 ◯/◯、抹消・移転予定日 ◯/◯、会計処理日 ◯/◯
5. リスク対策:データ初期化・引取証明・完了書類PDF保管・電子帳簿保存
6. 期待効果:維持費削減/更新サイクル最適化/環境配慮(再資源化率 等)
決裁:代表取締役/管掌役員/経理責任者/現場責任者

※本ページの内容は一般論です。個別の税務・会計・契約条件により取扱いが異なる場合があります。

(2025年12月11日公開、作成:三浦敏和)

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