EVバッテリー再利用が本格化

廃車

車は廃車、でもバッテリーは現役? EVバッテリーの「第二の人生」が広がっています

電気自動車(EV)が少しずつ身近になってきました。

EVといえば、大きなリチウムイオンバッテリーを搭載しているのが特徴です。

では、そのEVが古くなって廃車になったら、バッテリーも一緒に使えなくなってしまうのでしょうか?

実は、そうとは限りません。

車としての役目を終えたあとも、EVバッテリーにはまだ電気を蓄える能力が残っている場合があります。

そのため現在、使用済みEVバッテリーを別の用途で再利用する、いわば「バッテリーの第二の人生」が注目されています。

EVバッテリーの「リユース」が注目されている

愛知県は2026年10月8日、あいち次世代バッテリー推進コンソーシアムの取り組みとして、「車載用蓄電池のリユース実装に向けた劣化診断・安全性評価の動向」をテーマとしたセミナーを開催すると発表しました。

セミナーでは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、電気安全環境研究所、フォーアールエナジーなどが、使用済み車載バッテリーの劣化診断、安全性評価、標準化、認証、実際のリユース事例などについて紹介する予定です。

つまり、EVバッテリーの再利用は単なる研究テーマではなく、「どう安全に再利用するか」「どう品質を判断するか」という、実際に社会で使うための段階へ進んできています。

車で使えなくなっても、まだ電池として使える?

EVには、走行時に大量の電力を瞬間的かつ安定して供給できる、高性能なバッテリーが必要です。

しかし、バッテリーは長年使用すると少しずつ性能が低下します。

その結果、

  • 航続距離が短くなる
  • 充電できる容量が減る
  • 自動車用として求められる性能を満たしにくくなる

といった変化が起こります。

ところが、「自動車用として性能が不足している」ことと、「電池としてまったく使えない」ことは同じではありません。

日産自動車は、使用済みEVバッテリーを検査して状態によって分類し、車両用の交換バッテリーや定置型蓄電池、バックアップ電源などに再利用する取り組みを進めています。

どんなところで再利用されるの?

使用済みEVバッテリーには、さまざまな再利用方法があります。

家庭や施設の蓄電池

太陽光発電で作った電気を昼間に蓄え、夜間に使用する定置型蓄電池として活用できます。

車を走らせるほどの高い性能が必要なくても、建物で電気をためる用途なら十分に活躍できる場合があります。

停電時のバックアップ電源

災害や停電の際に、照明や通信機器などへ電力を供給する非常用電源として活用する方法もあります。

日産では、使用済みEVバッテリーを学校や地域施設などのバックアップ電源として利用する事例も紹介しています。

工場やデータセンター

さらに規模の大きな活用も始まっています。

2026年6月には、NTTデータ、フォーアールエナジー、日産トレーデイングが、EVのリユースバッテリーをデータセンターの無停電電源装置(UPS)に活用する取り組みを発表しました。

電力需要が高いときには蓄電池から電気を供給し、余裕があるときには充電することで、電力系統の安定化にも利用する計画です。

車の中にあったバッテリーが、将来はデータセンターを支えている。

そう考えると、なかなか面白いですよね。

「リユース」と「リサイクル」は何が違う?

ここで少し分かりにくいのが、「リユース」と「リサイクル」の違いです。

リユース(再利用)は、バッテリーそのもの、または内部の部品を再び製品として使うことです。

例えば、

  • EVから取り外したバッテリーを蓄電池として使う
  • 状態の良いモジュールを選別して別のバッテリーに利用する

といった方法です。

一方、リサイクルは、バッテリーを分解して、リチウム、ニッケル、コバルト、銅などの材料を回収し、再び資源として利用することです。

つまり理想的なのは、

まず使えるものはできるだけ長くリユースし、それでも使えなくなったら最後にリサイクルする。

という流れです。

これから重要になる「バッテリーの健康診断」

ただし、使用済みバッテリーなら何でもそのまま再利用できるわけではありません。

重要になるのが、バッテリーの状態を正確に調べる劣化診断です。

同じ年式・同じ車種のEVでも、

  • 走行距離
  • 充電回数
  • 急速充電の使用状況
  • 使用環境
  • 気温
  • 保管状態

などによって、バッテリーの状態は変わります。

そのため、「このバッテリーはあとどれくらい使えるのか」「どの用途なら安全に使えるのか」を判断する技術が重要になります。

今回、愛知県が開催するセミナーでも、劣化診断や安全性評価が大きなテーマとなっています。

廃車屋から見ると、EVはちょっと特別な車

私たち旭商会では、廃車として入庫した車から、まだ使える部品を取り外して中古部品として再利用しています。

エンジン、ミッション、ドア、ライト、オルタネーター、エアコンコンプレッサーなど、車には廃車になったあとも使用できる部品が数多くあります。

EVが増えてくると、その中に「大容量バッテリー」という非常に大きな価値を持つ部品が加わります。

ただし、EVの高電圧バッテリーはガソリン車の一般的な部品とは異なり、高い電圧を扱います。

取り外しや保管、運搬、診断などには、適切な知識や安全対策が必要です。

これからEVの廃車が本格的に増えてくれば、自動車解体業界でも、

  • バッテリーの安全な取り外し
  • バッテリーの状態確認
  • リユース可能かどうかの判断
  • 適切な保管・運搬
  • 再利用先への流通
  • 最終的な資源リサイクル

といった新しい知識や技術が、ますます重要になってくるでしょう。

「廃車=終わり」ではない時代へ

車が廃車になると聞くと、「そこで役目が終わる」と思われる方も多いかもしれません。

しかし実際には、車にはまだ使える部品や資源がたくさん残っています。

そしてEVでは、さらにバッテリーそのものが別の場所で活躍する可能性があります。

車としての第一の人生を終えたあと、今度は蓄電池として第二の人生を始める。

そして、その役目を終えれば、最後は材料としてリサイクルされる。

これからの自動車リサイクルは、単に車を解体するだけではなく、「どこまで長く部品や資源を活用できるか」という考え方が、さらに重要になっていきそうです。

旭商会でも、まだ使える自動車部品を中古部品として再利用し、残った車体や金属も資源として循環させています。

EVが増えても、「使えるものを最後まで使う」という自動車リサイクルの基本は変わりません。

10年後、廃車になったEVのバッテリーが、どこかの家庭や工場、データセンターを支えている。

そんな未来が、もう始まりつつあります。


参考・出典

愛知県
「あいち次世代バッテリー推進コンソーシアム 第5回セミナー『車載用蓄電池のリユース実装に向けた劣化診断・安全性評価の動向』を開催します」
https://www.pref.aichi.jp/press-release/kagaku/aibc-5th-seminar.html

フォーアールエナジー株式会社
「電力系統安定化に向けデータセンター事業者として需給調整市場に参入へ」
https://www.4r-energy.com/news/2026/0625/

日産自動車株式会社
「電気自動車のバッテリーがおくる有意義なセカンドライフ」
https://www.nissan-global.com/JP/STORIES/RELEASES/4r/

日産自動車株式会社
「クルマから地域社会へ:日産リーフ再生バッテリーの新たな活躍の場」
https://www.nissan-global.com/JP/STORIES/RELEASES/second-life-leaf-batteries.html

(2026年10月13日公開、作成:三浦敏和)

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